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【コラム#87】復職支援における自律訓練法の役割について

【コラム#87】復職支援における自律訓練法の役割について

みなさんこんにちは。ヒューマン・タッチ森川です。コロナ禍、思う様に外出できない期間が長引いています。

若年層のうつ病や、若い女性の自殺の増加。また、新入社員や中途入社の方のメンタル不調など、現場で数が多くなってきていることを実感します。

自宅や居室でできるセルフケア(リラクセーション)として、自律訓練法の実践的なセミナーを希望される企業様も増えています。復職支援の場面では、以前から自律訓練法などのリラクセーションの手法は多く用いられてきました。

今回は「復職支援における自律訓練法の役割について」について、お話しさせてください。以前、第25回日本睡眠学会にて、日本医科大学千葉北総病院メンタルヘルス科の木村真人先生と、発表させていただいた内容です。

 

演題:『復職支援における自律訓練法の役割についての一考察』

所属:日本医科大学メンタルヘルス科、株式会社ヒューマン・タッチ 

発表者:木村真人、○森川隆司

        【目的】

        近年、職場においてメンタルヘルス不全による休職者が増加している。中でも、うつ病による休職とその復職支援が大きな問題となっている。うつ病休職からの復職支援については、公的機関にとどまらず、病院、民間企業などで実践的に研究・実施されてきている。

        今回、民間のメンタルヘルス支援機関において、自律訓練法(Autogenic Traning:以下, AT) を組み入れた集団認知療法をメインとした復職プログラムを実施し、ATのもたらす効果について考察を行った。

        【方法】

        日本医科大学メンタルヘルス科からの紹介による、うつ病による休職・休学中の患者5名と就学を目指す社会的ひきこもり患者1名に対して、3時間の復職プログラムを毎週1回、計6回実施した。プログラムは、集団認知療法やコミュニケーショントレーニングに加えて、毎回ATを第2公式まで30分程度実施する構成とした。

        (実施前と実施後にCES-D(※1)、TEG(※2)を実施し、最終回のプログラムでは感想文を回収した。また、プログラム終了後もカウンセリングを継続している3名については、ATの実施について別途インタビューを行った。)

        ※1  CES-Dは自記式のうつの心理検査で、患者本人に質問項目に答えていただくことで、うつの症状を評価することができる。

        ※2  TEGとは、「東大式エゴグラム(Tokyo University Egogram)」の略称で、質問紙法による性格検査の1つ。

        【結果・考察】

        プログラムを最後まで継続した5名について、3名が職場復帰、2名が就学という結果となった。

        また、5名のCES-D結果は、「実施前」平均得点は21.8、「実施後」平均得点は14.6となり、T検定(※3)による有意な差は見られなかった。しかし、プログラム終了後の感想、またはその後のインタビューから、5名のうち4名は現在もATを継続しており、ATを獲得したことについて、

        「ATをマスターすることがプログラムでの1つの目標となった」

        「リラックスすることを実感できるようになった」

        「実際の場面(テスト)でATを活用し、問題に集中することが出来た」と肯定的な意見が寄せられた。

        認知療法による取り組みに加えて、ATを実施することにより、その習得について毎回実感が得られ、復職に向けての取り組みを実感させるものとなった可能性がある。また実際の緊張場面でのATの実施とその効果の実感は、復職時の精神的な負荷を下げる効果があったのではないかと考えられる。

        ※3 T検定とは「平均値の差の有無」や「相関関係の有無」を統計的に判断する方法のこと。

        【考察を終えて】

        上記考察でも触れていますが、病気になったこと、また休職してしまったことに対して罪悪感や自責の念が強い、典型的なうつ病の方にとっては、「自律訓練法」という一種の「武器」を手に入れたことは、復職時に自信につながり、継続して自分の変化を感じることが出来た際には、自己肯定感も上げる要因にもなると考えています。

        まじめで几帳面な性格だからこそ、継続して効果を感じやすいのかもしれません。今後、「自律訓練法」が治療や復職の場面以外でも、セルフケアの1つとして、職場においても、より活用される機会が増えてくるような気がします。



        投稿日:2021.09.28
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