【コラム#94】職場環境改善に生かすストレスチェックの組織結果
みなさん、こんにちは。株式会社ヒューマン・タッチの森川です。今回は、職場環境改善に生かすストレスチェックの組織結果についてです。
先日、コンサルテーションのお客様先の定例会にて、上司のハラスメントの問題が話題となりました。まずは、不調を呈している部下の面談についての対応でしたが、お話を聴いていくと、この上司の下について不調となったのは1人ではない、とのお話です。
では、その上司は誰から見ても、ひどい、マネジメントのできない上司かと言えば、そうでもないようです。会社のために、責任感と使命感を持って、人一倍働き、会社の業績にも直接的に貢献しているようです。ただ「完璧主義」「白黒思考」が強く、同じような傾向の人間を採用することから、部下もまじめに仕事するのですが、やはり耐え切れなくて不調をきたす、このようなパターンのようです。
一昔前までは、「あの上司は成果上げているから」「厳しい言葉はあなたのためを思ってだから」「次の異動までなんとか我慢してくれ」「あの人に嫌われると、後で苦労するよ」などという言葉で濁されていたケースも多かったのではないでしょうか。会社側も、面倒を起こされるよりも、部下に引き下がってもらったり、場合によっては、部下に辞めてもらう方が利益が大きいと、どこかで考えていたのかもしれません。
しかし、現状、大企業では昨年から、中小企業でも本年の4月から、いわゆるパワハラ防止に関して企業側の義務が課されるようになりました。また、本質的な問題をうやむやにして、短期的に問題がおさまるかもしれませんが、中長期的には企業側に大きなデメリットが生まれる可能性が高くなります。
- パワハラを放置する職場に対して、他の従業員のモチベーションが下がり、組織としての力が弱まる
- パワハラの存在がSNS等、様々な手段によって世間に公開される可能性があり、優秀な人材があつまらなくなる
- スーパーマンのように仕事ができる特定の社員だけの集まりになり、次の世代を担う人材が育たない
- 会社風土が固定化され、柔軟な発想による企業発展が阻害される
一握りのスーパーマンのような管理職によって支えられており、共通して皆パワハラ傾向がある中小企業は珍しくないと思います。次世代の管理職候補がことごとく辞職し、スーパーマンといえども加齢と共に疲弊してきている現状も散見されます。実際に会社の屋台骨を支え、成功体験に基づいた信念を強く持つこのような人たちに、マネジメントスタイルの変更を求める事は容易ではないです。
私は、このような場合、まずは経営層が上記の課題をしっかりと把握して、対策の必要性を自分事として理解する必要があると感じています。
ここで活用できるのが、ストレスチェックです。上述のような会社ではストレスチェックは法的に行っているとはいえ、その組織結果を活用し切れていないケースが多いように感じます。以前のコラムでも書きましたが、ストレスチェックはセルフケアだけでなく、その結果からの職場環境改善も目的の一つとなっています。
①「人事労務担当者への結果の開示と課題の共有」
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②「経営層や衛生委員会への結果の開示と課題の共有」
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③「部門長への結果の開示と改善案の検討」
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④「各部門での職場環境改善の取組」
このような流れで、組織結果を活用していくことは理想に近いと感じています。
④については、
■「経営層による職場環境改善案の策定」
■「部門長による職場環境改善案の策定」
■「部門の構成員全員による職場環境改善案の策定」
の3つの方法が考えられます。
次回はそれぞれのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。