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【特別寄稿】コロナ禍と子どもの発達障害

【特別寄稿】コロナ禍と子どもの発達障害

「新型コロナウイルス感染拡大予防」で様々な対策が取られ、小さい子供を持つ親の環境も変化してきました。とりわけ初めての妊娠・出産をされたお母さんは不安な日々を送っていると思います。

親の悩み事

妊娠中の母親教室の中止、乳幼児健診の延期、支援センターの利用縮小などコロナ禍前に比べて同世代の子供を持つ親同士の関わる機会も減りました。そんな中、発達障害のあるお子さんを育てている親御さんも様々な悩みを抱えています。

まずよく聞くのはマスク。大人でもマスクは不快と感じる人も多いと思いますが発達障害のあるお子さんは感覚過敏を持っている子も多いためマスクをすることが難しい場合があります。

療育や幼稚園に通わせたいと思っても、マスクが必須で通園ができない。マスクを着けることができたとしても、マスクをすることにより双方の口元や表情が読み取れず、コミュニケーションを取るのがより難しい。幼稚園や学校でもパーテーションを用いての『黙食』が推奨され、食事の楽しさを感じることが難しくなっています。

社会性を学ぶ機会の喪失

密を避けて公園で遊ぶとなると、集団生活や人との関りが苦手なお子さんは遊びの中で学ぶ機会を失ってしまい、お友達とのやり取りの中で『ありがとう』を伝えたり、順番を守る、譲ったり等の社会性を得る機会も少なくなってきてしまいます。

お互いの家に行って遊んだり、その際に自分のおもちゃをお友達に貸してあげたり・・・そんな経験もできなくなってしまっています。こんな状況が続くと子どもにストレスが溜まってしまい、問題行動がより顕著に出てきてしまいます。

親のストレス

それでは親として子供にできることはどんなことがあるでしょうか。

・子供の様子をよく観察し、細かい心の動きにも目を配る

・幼稚園や学校と密に連携を取り、情報共有をする

・療育先と相談し可能であればリモートでの援助もできるように体制を整えておく

しかしながら、発達障害を持つお子さんを育てている親御さんは、このコロナ禍でより大変な思いをし、悩み、それが今現在かなりのストレスになってきていると思います。ひとえに発達障害と言ってもそのお子さん一人一人に個性・特性があり、援助の仕方や対応は様々です。

それぞれの悩み事

ここでひとつのエピソードを紹介したいと思います。

自閉症スペクトラムとADHDのお子さん(3歳男児)を育てているお母さん(以下Aさん)がいました。同じ療育先に、大人しくて聞き分けもよく可愛い女の子がいて、毎回顔を合わせていくうちにその女の子のお母さん(以下Bさん)とも話すようになり思わず、

『いつもきちんと座って先生のお話もしっかりきけておりこうさんですね』

と声をかけたことがありました。するとBさんはびっくりした様な表情をしてこうおっしゃいました。

『私はいつもあなたの息子さんのことをうらやましく思ってみていましたよ』と。

Aさんは、うちの子なんてずっと動き回って多動だし、言うこともほんとに聞かなくて毎日疲弊していたので、うらやましがられるなんて思ってもみなかったようです。Bさんはつづけて、『うちは早産だったので発育が遅れているので、元気に走ったりお話ができません。活発に楽しそうに遊んでいる姿を見るととてもうらやましい』とおっしゃいました。

その瞬間、Aさんはハッとしたそうです。普段から、自分の子はいつも動き回っているので、おとなしくて聞き分けがいい子供がうらやましかったのですが、ついそれをBさんに伝えてしまい、相手が子供のことで何に悩んでいるのか深く考えずに発言してしまったことを後悔したそうです。

気づき、の大切さ

子どもが発達障害でなければ気づかなかったこと、安易に相手のことを傷つけてしまっていたかもしれないこと、子どもの障害を通して大切なことを親も学ばせてもらった出来事だったようです。

その後AさんとBさんとの関係は良好でいつでも悩みを話したり本音を話せる仲になりました。Aさんが、なんの気なしに発してしまった言葉ですがAさん自身もたくさんのことに気づけていい転機になったようです。どうしても自分の子供は客観的に見ることができないので第三者の意見・助言はすごくためになりますし新しい気づきに繋がります。

共感と理解

一方で、周りの方の理解が得られないことで苦しい、悲しい思いをするお母さんもたくさんいらっしゃいます。子供のことを少し話すと、『考えすぎ』『もっと気楽に』『そんなことないよ』『うちの子だって』… 悪気があってそういう言葉を掛けているのではないことは頭ではわかっているのですが、自分の心に余裕がなかったり、卑屈になってしまっているときは、「またか、そうじゃないのにどうしてわかってくれないんだろう」と負の連鎖に陥ります。

身近に相談のできる人は誰でもいいわけではなく、理解してくれて、共感してくれるひとじゃないと、もっとしんどくなってしまいます。幼稚園のママ友であっても、(誰に、何を、どこまで伝えるか)も悩みどころです。

コロナ禍の過ごし方

とくにコロナ禍では親御さん自身が無理をして、悩みすぎてキャパオーバーになることはしばしば考えられると思います。安心して相談できる人に悩みや気持ちを吐露したり、家族と協力して、ひとりでは決して抱え込まず、心の健康を保つことも重要になってきます。

このコロナ禍の生活によって親子が共倒れせずに、しんどいばかりの日々の思い出ではなく、困難を乗り越えながらも親も子供と共に成長した良い機会となるよう、模索しながらも無理せず過ごしていってもらえたらと考えています。



≪執筆者紹介≫ 別宮 麻希

精神保健福祉士。

特殊法人やメンタルクリニックでの勤務経験がある。自身も発達障害を持つ子を育児中。









投稿日:2022.01.18
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