【コラム#97】管理監督者への全員面談
みなさん、こんにちは。株式会社ヒューマン・タッチの森川です。ここのところ、管理監督者への全員面談を数多くこなしています。「マネジメントインタビュー」・「ライン長面談」など、いろいろな呼び名がありますが目的も対象者も様々です。
■目的
・部門長自身の心と体の状況の把握とセルフケア対応
・特定の部門の現状把握(課題感、強味の見える化)
・特定の地域や組織内の現状把握(課題感、強味の見える化)
・職場環境改善 など
■対象者の一例
・ストレスチェックの結果、総合健康リスク値が高い部門(120以上など)の部門長対象
・ストレスチェックの結果、高ストレス者の割合が高い(30%以上など)部門長対象
・年次の浅い主任や係長クラス
・特定の地域や組織の部門長 など
一般職の皆さんへの全員面談については、30分ほどの時間設定が多いのですが、管理監督者対象の場合には、可能であれば50分ほどお時間いただいています。面談内容の開示同意書はいただかないので、個別の面談結果報告書は作成しませんが、面談全体を通じての、目的に応じたご報告を定量的な面と定性的な面から書面にしてお伝えしています。
上記目的に応じたヒアリングの意味合いもありますが、部門長の皆さんも、個別面談としてご自身のプライベートな悩みや、マネジメント上の困りごとなどが話題の中心となることも多くあります。
私自身も50歳を目前としている年代ですが、この年代の管理監督者のお話に共通する事項があるのを感じます。「指導や教育の難しさ」です。
■自分たちの学生時代は、まだまだ右向け右、個よりも集団、の世の中だった。こんなものだと思っていたし、疑問には感じなかったかもしれない。
■社会に入り、上司や会社からも「労働時間の長さ」「組織の一員としての行動」などが主な評価対象であり、指導と称して、時にはひどい言葉や手が出ることもあった。それが通過儀礼であり、それを経て成長していくと教えられた。
■何か居心地の悪さを感じはしたが、それを否定してまでの行動は起こせなかった。ただ、自分自身では、このような指導教育については内心反発も強く、自分が上司になった時には絶対にこんな指導はしないでおこうと考えていた。
■時代が進み、SDGsやコンプライアンス、ハラスメントや持続可能性社会など、自分たちもなんとなく大切にしたいと思っていた価値観が、社会的に認められるようになってきた。
■今入社してくる若い世代は、自分事としてこれらを理解して、取り組んでもいると思うが、自分たちはお題目としての理解に留まることも事実だ。
■指導や教育の場面では、「○○のような表現はハラスメントになります」「○○の行動は○○違反となる可能性があります」「個性を大切に」「良いところを伸ばしましょう」このような情報がまず頭に浮かんでしまう。
■今でいうハラスメント上司のやり方を踏襲することはできず、守るべき事柄に縛られ、かといって周りに適切なロールモデルが存在しない。そんな私たちは、何を基準として指導教育すればよいのでしょうか。自分自身で作っていくしかないのでしょうか。
「指導教育の難しさ」の背景には、こんな声が聞こえてきます。中小企業の管理監督者としても他人ごとではない感覚です。
セルフケアセミナー、特に新入社員研修や3年目までの研修では、自らが大切にする「価値」について話をして、明確にする作業を入れています。業務だけでなく、人生そのものが選択の連続だとすれば、私達はなにかしらの価値基準(大切にしている考え、大切にしたい考え、ありたい姿、など)をもとに、それぞれの選択を実行していると捉えられないでしょうか。この基準となる「価値」を明確にすることは、メンタルヘルスに大きな影響を与えると考えています。
翻って、「従業員」、「管理監督者」、「組織」の視点で、最も価値が明確なのは、実は「従業員」なのかもしれません。仕事の好き嫌いを公然と表明して自分の価値基準を最優先させる困った社員、裏を返せば大切にしているものが明確なのかもしれません。
「管理監督者」「組織」の価値が明確で、腹落ちしておいて、しっかりと説明できなければ、「従業員」への指導や教育はぶれてしまうのではないでしょうか。 「組織」の価値を浸透させるには、リーダーの発信力と説明力が重要になるように感じます。管理監督者にしっかりとリーダーの価値が伝わっていれば、授業員への指導と教育は、もう少しやりやすくなるのではないでしょうか。