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10代、20代新入社員アンケートと全員面談から理解する、早期離職者の心持ちと防止策【コラム#132】

10代、20代新入社員アンケートと全員面談から理解する、早期離職者の心持ちと防止策【コラム#132】

【ヒューマン・タッチ レター vol.132】

みなさんこんにちは。ヒューマン・タッチの森川です。

年末の足音も聞こえてくるこの頃ですが新入社員の皆さんにとっては、入社半年が経過し、長い研修が終了し配属される方、また、配属後少し時間がたち「お客様」から「社員」として現場での負担が高まっている方、様々と思います。

実は、今ぐらいの時期に、外部専門家による新入社員の全員面談を実施する企業様もあります。入社直後は気も張っていて、前向きな気持ちで働けていても、上述のような理由で入社半年がたち、心身の反応が出て来たり、いろいろな想いを持つ新入社員の方が多いからですね。

弊社では、高卒の10代の新入社員から、大卒・院卒の20代の新入社員の方まで、多くの声を聴いてきました。この時期の面談では、すでに退職している方もありますが、やはり「辞めたい」「仕事が合っていない」というお話しも一定程度あります。というよりも、増えてきているように感じます。

人事労務側からすれば、入社までの積極的なイメージがベースの中で、研修や人事面談などでの前向きな取組や発言を見る中で、突然の「相談があります」コメントは、まさに青天の霹靂といったところかもしれません。

では、1020代の新卒新入社員が、どのような面持ちで早期退職していくのでしょうか。また、早期離職を防ぐにはどのような取組が効果があるのでしょうか。過去20年にわたる新入社員の全員面談アンケート(一部抜粋)や私たちの面談から見えてきた内容から、私見になりますが整理してみました。

■アンケート結果から

《心身の反応》 「各種身体症状」61%、「気分・感情面での反応」58%、「睡眠の問題」45%、の順で反応が表出されています。さらに、一般的には、精神疾患が疑われるような反応(K6が15点以上)を示す方も、15%を超えています。皆さんの周りの新入社員の方々ですが実は、半分以上の方が、学生自体には感じえなかった、心や体の反応に直面していることがわかります。そのうち、15%程度については、専門的な対応が必要なレベルまで反応が強まっていることが考えられます。

《ストレス要因_職場内》 「適性度」20%、「働きがい」15%、「対人関係」9%、の順でストレス要因を挙げています。上司や顧客との対人関係よりも、自分自身の内面に目が向いている傾向かもしれません。また、自分が何を提供できるか、よりも、自分は何を提供されて成長できるか、に目が向きがちな方もあるのではないでしょうか。

《ストレス要因_職場外》 「自分の性格」32%、「健康問題」24%、「経済問題」15%、の順でストレス要因を上げています。初めての職場集団の中で、学校では問題にならなかった性格傾向について、否定されたり改善を指摘されたりすることについて、ストレスを感じることが多いのかもしれません。また、「健康問題」が2番目に来ています。前述したように6割の方に心身の反応が出ています。もともと弱かった部分や、既往歴のある問題が、入社後、表出してきている可能性を感じます。さらに「経済問題」が3番目に来ています。初めての一人暮らしでの経済問題にとどまらず、奨学金の返済や家族への仕送りをになっているかたもあるのではないでしょうか。

■面談内容から

《既往歴》 アンケート結果からも「身体症状」「健康問題」が新入社員の方の中で、多くの困り事として捉えられている可能性がでています。特に、パニック発作や不安障害、場合によってはトラウマ的な体験など、学生時代にこれらの症状を経験している方にとっては、環境の変化の中で、業務遂行上大きな不安となることが述べられることがあります。具体的には、「会議への参加(狭い空間内での対応)」「車の中での男性職員との同行営業」「1対1での顧客対応」などが大きな負担として語られます。結果、「仕事が合っていない」との結論を導く方もいるように思います。業務遂行上必要な、既往歴や服薬の状況については、慎重ながらも必要な情報収集は意味があるのではないでしょうか。

《性格の2極分化?》 新入社員の方のお話をおうかがいすると、いわゆる「会社人間」の予備軍となるような「真面目・几帳面・他者優先」という方と、「仕事はお金のため」「プライベートが基本でそこに仕事を合わせる」方と、差が激しいように感じます。前者は、「○○ねばならない」という認知も強く、入社早々「自分は貢献できているだろうか」「自分には価値があるのだろうか」「同期と比べて仕事できていないのではないか」「ちゃんと仕事できているか」との自分で設けたハードルと一生懸命戦い、疲弊してしまいます。助けを求めることが難しくなった時、「無理です」となる方もあるように感じます。

 後者は、一定程度仕事に関して割り切った考えを持ち、自分を責めるような感覚は少ないかもしれません。他方、自分の考えを最優先する傾向が強く「ジョブローテーションは聞いてなかった」「入社時と話が違う」「どうして残業しないといけないのか」といった、条件面での齟齬や、自分が正しいと思っている考えからの逸脱に関しては、「もういいです。他に行きます」と感じる方もあるのではないかと思います。

《仕事に関する準備性(高卒VS大卒)》 一概に高卒の方と、大卒もしくは院卒の方を比べることは個人差もあり危険ですが、面談の中で感じることは、「仕事への準備性」の違いです。高卒の方は、学校(先生)や家族から勧められての職場選択も多く、就職する職場での仕事のイメージが出来ていない方も多いように感じます。職場体験などもありますが、結局はきれいな職場やおいしそうな社食や、優しそうな先輩との接点であり、バイトもしたことがない、親元も離れたこともない学生さんが、「良い面」「美しい面」のみ強く頭に入ってしまうのかもしれません。

 例えば、船員として勤務する機関士の卵(もちろん、機関科にて乗船実習や研修を受けてきた人です)が、実際の船上勤務を始めて「こんなに油まみれになるとは思わなかった」と早期退職する方もありますし、配送を前提とした業務で入社して「運転が怖い、寒い日も外で仕事がつらい、重たいものは持ちたくない」と辞めてしまう方もあります。実業務の「良い面」だけでなく、現場での「大変な面」「辛い面」も同じく事前に共有し、その中での諸先輩の工夫や、そこから得られる働き甲斐を共有することは意味があるのではないかと感じます。他方、大卒や院卒の皆さんは、アルバイトや様々な社会経験を経て、一定程度「仕事」への準備性は出来ているように感じます。ただ、個別に大切にしている「価値」と会社や部門また上司の「価値」の相違が明確になった際には、すぐに「自分の為に職場を変える」選択肢をとる傾向が強いように思います。全員面談にてよくきく言葉は「自分に合った仕事ができるか」「成長できるかどうか」です。具体的に「成長できると確認できる制度や仕組みがあるか」とお話しになる方もあります。

 本人が大切にしている「価値」を求めて仕事をしている傾向が強い方には、会社や部門また上司の「価値」を言語化し、常に「価値」のすり合わせの作業を怠らないことは、意味があるのではないでしょうか。また、会社や部門また上司が実務経験の中で感じた「成長」の共有も意味があるのではないかと思っています。

■まとめ

・新入社員の全員面談から、心身の反応を感じている割合が「各種身体症状」61%、「気分・感情面での反応」58%、「睡眠の問題」45%、となり職場のストレス要因として感じている割合は、「適性度」20%、「働きがい」15%、「対人関係」9%となり、職場外のストレス要因として感じている割合が、「自分の性格」32%、「健康問題」24%、「経済問題」15%、との結果となった

・入社直後は、やはり自身の「心身の各種反応」「性格面」「健康面」「経済面」などに目が向きやすい

・元来有する性格面や、既往歴からのストレスへの脆弱性は、環境変化の中で影響を顕在化する可能性が高い

・特に10代の新入社員に関しては、仕事への心身の準備が整っていない場合、おおきな影響を及ぼす可能性がある

・自らが大切にする「価値」をベースに業務選択している新入社員に関しては、「価値」のずれやぶつかり合い、が生じた際には転職の契機となる可能性がある。

・以下の対応は、早期離職予防に意味があると考える。

 

【入社前】

・業務遂行上必要な情報を前提とした、既往歴や服薬中であればその影響についての見極め(個人情報として収集や取り扱いには非常に慎重な扱いが前提)

・実業務の「良い面」だけでなく、「大変な面」「辛い面」も同じく事前に共有し、その中での諸先輩の工夫や働き甲斐を共有すること

・本人が大切にしている考え「価値」を言語化して、職場との重なりについて考える時間を提供すること

 

【入社後】

・雇用契約を基本として「働く」とは何か、どのようなルールが会社と従業員双方に適応されるのか、改めて共有する場を設ける

・自分の性格傾向(認知のくせ)を知り、柔らかく考えて、柔らかく行動するための手法を学ぶ場を提供する

・自分の考えや気持ちをきちんと表現することの意味を知り、その手法を学ぶ場を提供する

・会社や部門また上司の「価値」を言語化し、常に従業員との「価値」のすり合わせの作業を怠らない

・メンタル面の支援(相談窓口、全員面談、SC)だけでなく、健康問題や金銭的問題の支援についてのサポートも早期に提供(周知)する

・先輩や上司など、実際に現場で働く人達が考え感じる「働きがい」や「成長」を語る(共有する)場を設ける
投稿日:2025.12.12
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